バイクに乗っていると、「暖気運転」をする人を多く見かけると思います。
ただ、この暖機運転については、必要と言う人も居れば、不要と言う人も居ます。
バイクには暖気運転は必要なのでしょうか?
また、
「夏でも暖気運転はやるべき?」
「どれくらいの時間、暖気をするべき?」
「そもそも、暖気運転って何?」
と言うような疑問を持つ人も多いのではないでしょうか?
そのため、ここでは
などについて、詳しく解説しています。
そもそも暖気運転とは?
バイクに限らず、車でも良く耳にする「暖気運転」。
では、暖気運転とは何なのでしょうか?
ひとことで言うと、
です。
良く、誤解されがちなのですが
「暖気=しばらくアイドリングをすること」
と思う人が多いのですが、これは間違いです。(一部は正解なのですが)
ポイントは、なぜ暖気運転をするのか、その目的です。
バイクの暖気運転の目的と効果
では、なぜ暖気運転をするのでしょうか?
暖気運転の主な目的は
と言う事です。
補足しますね。
まず、エンジンオイル。
エンジンの始動前は、エンジンオイルは下に溜まってしまっている状態です。オイルには、各パーツを潤滑させる役目がありますので、エンジン全体に行きわたらないで走り出すと、エンジン内部にダメージを与える事にもなります。
そのため、エンジン全体にオイルを行き渡らせる必要があると言う事ですね。
また、オイルは冷えていると硬い(粘度が高い)状態です。
エンジンが暖まると同時に、オイルも暖まると適切な硬さ(粘度)になって、しっかりとオイルの役割を果たすと言う事です。
オイルだけではなく、バイクのエンジンにも暖気の効果はあります。
金属は、暖かくなると膨張する性能があるのはご存じでしょうか。
通常、ピストンとシリンダーの間にはクリアランス(隙間)があります。この隙間は、エンジンが十分暖まっているときに適切なクリアランスになるように設計されています。
暖気をせずに走り出すと、このクリアランスが大きすぎて、圧縮漏れが起きたり、いまいち調子が出ないことがあると言う訳です。
もちろん、クリアランス(隙間)にはエンジンオイルも大きな役目を担っているので、全体にオイルが行きわたっている事も必要です。
それから、キャブレター。
ガソリンエンジンは、ガソリンと空気の混合気を霧状にして、爆発させることで動力を発生します。
キャブレターの場合には、しっかりと暖まっていないと霧化がうまくいかず、エンストしたりすると言うわけです。
そのため、キャブ車の場合には暖気は必須と言われていると言う事ですね。
最後に、バイク全体の暖気です。
暖気運転と言うと、エンジンやオイルを暖めることだけと思いがちですが、厳密にはバイク全体を暖めることを意味します。
タイヤやサスペンション、ホイールベアリングにダンパーオイルなど、バイク全体が冷え切っていると、きちんと性能を発揮できないと言う事です。
例えば、タイヤが冷えているときには、グリップ性能も発揮できませんし、サスペンションも冷えていれば、きちんと衝撃を吸収しないと言うわけです。
レースやサーキットなどを走る訳でなければ、そこまで神経質になる必要はありませんが、バイク全体を暖める事も大事な暖気運転と言う事ですね。
少々長くなりましたが、暖気運転をひとことで言うと、
「バイク全体やエンジン、オイルを普通に走っている状態に近づけるための運転や準備」と言うのが適切でしょう。
暖気運転は必要?不要?
ここまでの説明で言えば、やはり暖気運転はバイクに乗るうえでは必要です。
もちろん、暖気運転をしないで走り出しても、すぐにバイクが壊れてしまうと言う事は無いでしょう。
しかしながら、すぐにエンストをしたり、いまいち調子が出なかったりする事は良くあると思います。
バイク本来の性能を発揮するためには、暖気が必要と言う事ですね。
何より、目に見えないところでエンジンにダメージが蓄積されていきます。
長い目で見た時には、エンジンの寿命を延ばすためにも、暖気運転が必要と思っておいた方が良いでしょう。
インジェクションでも暖気運転をするべき?
良く、インジェクションのバイクには暖気運転は不要という話もあります。
これは、インジェクションの場合にはガソリンの噴霧が電子制御化されているからです。
キャブレターと違って、暖まらなくても安定したアイドリングをしてくれるのです。
そのため、エンジン始動後にすぐ走り出しても、エンストを起こすこともありません。
しかしながら、暖気運転の目的は安定した混合気の供給だけではありません。
エンジンオイルを行き渡らせたり、エンジン内部のクリアランス、バイク全体を適切な状態にするためには、インジェクションのバイクでも暖気はしておくべきでしょう。
夏でも暖気運転は必要?
季節的な面でも同様です。
エンジンが掛かりにくい冬には暖気をしても、夏の暑い時期には暖気は不要と思う人も居るかもしれません。
確かに、キャブのバイクでも夏ならすぐにエンジンが掛かることも多いでしょう。
ただ、エンジン始動前にはオイルが行き渡っていないのは、夏でも冬でも同様です。
暖気の目的を考えると、季節に関係なく暖気運転は必要と言う事になります。
バイクの暖気運転の正しいやり方
では、暖気運転はどのように行えば良いのでしょうか?
具体的には次のような手順で行います
エンジンオイルが全体に行きわたるには、数十秒もあれば十分です。
また、チョークを引きっぱなしでアイドリングをしておくのも良くありません。
チョークはあくまでもエンジンを始動させるために使うものです。掛かった後は、徐々に戻していきます。
冬場は夏よりも時間が掛かるかもしれませんが、アイドリングが安定さえすれば、ゆっくりと走り出して問題ありません。
夏なら1分、冬でも2~3分ほどで安定するのではないでしょうか。
ただ、走り出してもしばらくは、一気にスロットルを捻ったり、急停車をしないようにしましょう。
寝起きのバイクを徐々に慣らしていくようなイメージです。
2~3kmほどゆっくり走って、バイクのレスポンスが良くなってくれば暖気運転は終了です。
やってはいけない暖気運転
一方で、やってはいけない暖気運転についても触れておきましょう。
例えば、
です。
アイドリングは暖気の一部ではありますが、ずっとアイドリングしておくことはあまり良くありません。
エンジン始動後、オイルが全体に行きわたり、アイドリングが安定してしまえば走り出してしまって問題ありません(しばらくはゆっくり走る必要はあります)
繰り返しになりますが、「アイドリング=暖気」ではありません。
アイドリング以上で10分以上放置しておいて、暖気終了!と全開で走り出す人も居ますが、これは良くありません。
あくまでもアイドリングは暖気運転の一部です。
また、エンジンが掛かった後に、スロットルを何度も捻って空ぶかしをする人も居ます。
これはエンジンやバイクにとって良いことはひとつもありません。
バイクにダメージを与えているだけになりますので、暖気運転の目的とは反していると言えるでしょう。
ちなみに高回転で回したからと言って、一気にエンジンが暖まると言う事はありません。
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暖気運転で一番大事なのは、エンジンやオイルが暖まるだけではなく、バイクが本来の性能を発揮できるように、全体が暖まることです。
そのため、アイドリング安定後に、一気に高回転で回したり、急発進・急停止をするような事も良くない暖気と言う事ですね。
寝起きのバイクがしっかりと慣れるまでは、ゆっくり静かに走るのがポイントです。
まとめ
最近のバイクはインジェクションが主流になり、性能も良くなってきています。
そのため、暖気運転をしなくても、すぐにエンジンが掛かったり、すぐに走りだすこともできます。
また、暖気運転をしなくても、バイクが壊れると言う事もないでしょう。
とは言え、長い目で見れば、ちゃんと暖気運転をすることでバイクの寿命を延ばすことにもつながります。
もちろん、これはインジェクションのバイクでも同様です。
人間でも、起きてすぐ全力で走るのはしんどいですよね。バイクも同様で、暖気運転は準備運動のようなものです。
大事なバイクなら尚更、暖気運転をしてあげてください。
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