バイクのバッテリーが上がってしまった時に、セルが回らずにエンジンが掛からない。
こんな時には「押しがけ」のやり方を知っておくと役に立ちます。
基本的には、キャブレターのバイクであれば、セルが回らなくても「押しがけ」でエンジンを掛けることができるのです。
そのため、ここでは
について詳しく解説しています。
押しがけでエンジンが掛かる原理と仕組みは?
まず、「押しがけ」とは、ひとことで言うとバイクを押してエンジンを掛ける手法のことです。
具体的な押しがけの方法の前に、なぜ押しがけでエンジンが掛かるのかを簡単に説明しておきましょう。
なぜなら、仕組みを理解していると、より押しがけのコツが掴めるからです。
普通は、バッテリーの電力を利用してセルモーターを回してエンジンが掛かります。
ここがポイントになりますが、セルモーターはエンジンの最初の爆発を起こすために、クランクシャフトを回転させる役割があります。
つまり、ざっくり言うと
と言う事ですね。エンジンが掛かっている状態ならば、
と言う事になります。
非常にざっくりした流れですが、押しがけはこの一連の流れを「逆」にすることでエンジンを掛けるという仕組みです。
バイク押して後輪を動かし、ある程度の動力が発生した時にギアを繋げば、クランクシャフトが回るという原理です。
クランクが回ってうまく最初の爆発が起きれば、エンジンが掛かるという訳ですね。
クランクを回すだけの力が必要になるので、バイクを押すときにはある程度のスピード(勢い)が必要です。
AT(オートマ)バイクは押しがけができない
このような仕組みですから、マニュアル(MT車)のバイクでないと押しがけはできません。
スクーターなどのオートマ(AT)バイクは押しがけができないと言う事は認識しておきましょう。
バイクの押しがけの方法
具体的な押しがけの方法については、
の3つパターンで説明していきましょう。
基本的な押しがけのやり方
まず、1人で押しがけをする方法です。
2人以上の時も、坂道を利用するときも、基本の操作手順は一緒になります。
補足していきますね。
まず、キーはONにしておかないと当然エンジンが掛かりません。また、サイドスタンドがちゃんと上がりきっているかも併せて確認しておきましょう。
また、押しがけのコツのひとつとして、少しチョークを引いて燃料を濃くしておくと掛かりやすいです。
ギアは250㏄以下なら2速でも平気ですが、3速の方が掛かりやすいでしょう。逆に大排気量のバイクの場合には、3速でないとキツイかもしれません。
あとは、バイクを押してダッシュです。
スピード(勢い)が出ている方がエンジンは掛かりやすいのですが、転倒しないように気を付けてください。
一番のポイントは、クラッチを繋ぐ瞬間とエンジンが掛かった後。
クラッチを繋いで、エンジンが掛かったと思ったら、すぐにレバーを握ってクラッチを切るようにしましょう。
慣れないうちは、エンジンが掛かった時にアクセルを捻ってしまって、バイクが暴走してしまうこともありますので注意してください。
また、クラッチを繋ぐ瞬間にバイクに飛び乗ったり、お尻をシートに乗せて荷重をかける事を推奨しているケースもあります。
たしかに、リアタイヤに荷重が掛かることでタイヤのロックがしにくくなり、エンジンが掛かりやすいとも言えます。
ただ、やらなくてもエンジンは掛かります。
むしろ、押しがけに慣れていない時には転倒のリスクが高くなりますので、初めは普通にチャレンジしてみた方が良いでしょう。
非常にわかりやすい動画があったのでリンクを貼っておきます。
2人以上でやる押しがけ
周りにバイクを押してくれる友人などがいる時には、
という形で行うのが安全です。(押す人は大変ですが・・・)
また、クラッチを繋ぐときに、リアタイヤに荷重も掛けやすいのでエンジンも掛かりやすいでしょう。
あとのエンジンの掛け方は、1人の時と同じです。
ただ、押しがけにはある程度のスピードが必要なので、繰り返しになりますが、押す人は大変です。
3人いる場合には、2人がかりで押してもらっても良いでしょう。
坂道を利用する押しがけ
ある程度、下り勾配のある坂道が近くにあれば、一人でもバイクに跨ったままで、楽に押しがけができます。
基本的な動作は変わりません。
キーをONにして、ギアは2速か3速。
バイクに跨った状態でクラッチレバーは握ったまま。
坂道を利用してバイクにある程度の勢いがついた時に、クラッチを繋げばOKという訳です。
ただ、坂道の時は失敗すると大変です。バイクを押して坂を登らなくてはならないので・・・。
押しがけでうまくエンジンをかけるコツは?
初めのうちは、なかなかエンジンが掛からないかもしれません。
エンジンを掛けやすくするコツは
というところでしょう。
クランクを回すには、低速ギアの方がパワーが必要になりますので、2速よりも3速の方が押しがけはしやすいです。
ただ、バイクの排気量やクセもあるので、2速か3速で試しながらやりやすい方を見つけると良いでしょう。
また、意外と押しがけは危ない面もあります。(転倒するリスク)
当然スピードは出ていた方が良いですし、クラッチを繋ぐタイミングでリアに荷重を掛けられると良いのですが、無理して転倒してしまっては元も子もありません。
慣れないうちは無理をしないことも重要です。
また、もし2人や、坂道で押しがけをする場合には、跨っている時にお尻は浮かしておいて、クラッチを繋ぐ瞬間にドンッと座ってリアタイヤに荷重をかけると成功しやすいです 。
インジェクションのバイクは押しがけができないって本当?
AT(オートマ)バイクの場合には、押しがけができないことは前述の通りですが、インジェクションのバイクも「押しがけはできない」と思った方が良いでしょう。
インジェクション(FI)とは、電子制御でエンジンに霧状の燃料(混合気)を噴射する供給装置のこと。
つまり、エンジンに燃料を送るのに「電気」を使うと言う事です。
そのため「バッテリー上がり」の状態では、ガソリンが供給されないのです。
どんなに「押しがけ」をしてクランクを強制的に動かしても、ガソリンが来なければエンジンが掛からないという訳ですね。
とはいえ、バッテリーが上がっていても、残っている電圧によっては押しがけで掛かることもあります。
燃料を送る役割である電磁ポンプが稼働するだけの電圧が残っていることや、ECU(エンジンコントロールユニット)と呼ばれるコンピューターが正常に稼働できる状態であることなどの諸条件がそろえば、インジェクションでも押しがけでエンジンが掛かることはあります。
ただ、基本的にはインジェクションのバイクは押しがけはできないと思っておいた方が良いでしょう。
バッテリーは寿命になっていなければ充電することで復活しますので、充電してみましょう。
関連記事≫バイクのバッテリーの充電方法と繋ぎっぱなしOKのおすすめ充電器
インジェクションに対して、キャブレターのバイクはシリンダー内の圧力を利用してエンジンにガソリンを供給する仕組みです。
アナログな燃料の供給方式といっても良いでしょう(メリットや良い点もたくさん有ります。)
バッテリーの電圧を利用せずに、ガソリンを供給できるので押しがけでエンジンが掛けられると言う事ですね。
まとめ
最近のバイクはインジェクションや高度な電子制御のバイクが主流になってきています。
そのため、「押しがけ」をできるバイクも少なくなってきています。
ただ、万が一の時に、押しがけのやり方を知っていると、ちょっとカッコいいかもしれませんね。
また、押しがけは転倒のリスクもあります。
特に大きなバイクの場合には、重量も重くなりますのでくれぐれも注意してチャレンジしてみて下さい。