数か月に及ぶ出張の時や、降雪の多い地域の冬季など、様々な理由で長期間バイクに乗れなくなってしまうような場合には、どのようにバイクを保管しておけば良いのでしょうか?
バイクは乗らないで放置しておくと、どんどん劣化が進んで行ってしまいます。
長期間動かさないでいたバイクは、きちんとした保管をしておかないと、いざ乗ろうと思った時には不具合が出てしまったりすることも少なくありません。
ここでは、長期間バイクを乗らない場合の適切な保管方法と、保管の際の7つの対策について解説しています。
長期保管で調子が悪くなる理由
バイクは乗らないと調子が悪くなると言われています。数週間ならまだしも、数か月の間乗らずに放置しておくと、色々な不具合が出る原因になります。
何故、長い間動かさないと、調子が悪くなるのでしょうか?
要因は様々ですが、例えばガソリンの劣化・腐食が上げられます。実は、ガソリンは腐るのです。腐ったガソリンや、腐らなくても劣化の進んだガソリンは燃焼が上手くいかず、エンジンのフケを悪くしたり、キャブレターの目詰まりを起こす要因になります。
また、ワイヤー類やブレーキ回り、チェーン周りなどの動作部分の動きが悪くなり、最悪の場合は固着(固まって)してしまいます。
他にも、タイヤの硬化やひび割れなども起こります。
しかしながら、何かしらの理由で、しばらくの間バイクを動かす事ができないという状況になる場合もあるでしょう。
そのような時には、できるだけバイクの劣化が進まないような長期保管の対策をしておきたいものです。
バイクを長期保管しておくときの7つの対策
では、できる限り良い状態を保って保管しておくにはどうしたら良いのでしょうか。ここでは長期保管の際にやっておきたい7つの対策をご紹介します。
ガソリンは満タンか抜いておく
前述のとおり、ガソリンは長期間そのままにしておくと腐食してしまいます。
しかしながら、数か月~半年程度であれば腐るほどにはなりません。もし半年以内程度であればガソリンは満タンにしておきましょう。
何故、満タンにしておくかというと、タンク内の錆を防ぐことが目的です。逆にタンク内のガソリンが少ない場合には、タンクの中が空気に触れてサビる原因にもなってしまいます。
また、満タンにした上で、防錆剤を入れておくと尚良いでしょう。
ワコーズのフューエルワンなどは、洗浄系燃料添加剤ですが、タンク内の防錆効果もあるのでお勧めです。
もし、1年単位で乗らないような長期保管の場合には、ガソリンは抜いてしまいましょう。ただ、ガソリンを抜いたタンク内は結露などで錆びやすくなりますので、タンク内にオイルスプレーを吹くなどして錆対策をします。
また、結露が湿気を防ぐために、タンクを外して風通しの良い場所や温度差の変化の少ない場所で保管しておくと良いでしょう。
フューエル(燃料)コックはOFFにする
フューエル(燃料)コックのあるバイクの場合には、燃料コックをOFFにしておきます。タンク内のガソリンがキャブレター内に行かないようにすると言う訳です。
「手動コック」という仕組みの場合には、通常「ON」「OFF」「RES(リザーブ)」の表示がありますので「OFF」にしておきましょう。
もし、「OFF」の表示が無い燃料コックの場合には、「負圧式コック」という仕組みです。 負圧式コックの場合には、「ON」、「RES」、「PRI(プライマリー)」の3種類の表示があります。負圧式コックはエンジンが掛かっていない時には燃料が流れない仕組みになっていますので、「ON」や「RES」のままで問題ありません。
通常、フューエルコックはタンク下あたりに付いています。また、一般的なスクーターなどコックが付いていない車種もありますので、その場合には、そのままで問題ありません。
≫関連記事:リザーブタンクの構造とコックの使い方
キャブレターのガソリンを抜いておく
キャブレター仕様のバイクの場合には、キャブに溜まったガソリンを抜いておきます。
※インジェクションのバイクの場合には、この対応は必要ありません。
キャブレターにはフロートチャンバー(フロート室)と言ってタンクから流れてきたガソリンが溜まる部屋があります。ここに溜まったガソリンの劣化は早いので、空っぽにしておく必要があります。
だいたい、フロート室の下部にプラスネジがマイナスネジ(六角ねじの場合もあり)で付いているドレンボルトを緩めるとガソリンを抜くことができます。(緩めるだけで抜かなくてOK)
フューエルコックが手動式の場合には、コックがOFFになっていないとタンク内のガソリンが延々と流れてしまいますので、OFFにしてから作業を行うようにします。
バッテリーは外しておく
バッテリーは付けておくと放電してしまうので、車体からはずしておきます。1ヶ月に1度くらい定期的に充電しておく方が良いですが、1年以上乗らないのであれば、諦めて乗る時に新品にするくらいの方が良いでしょう。
充電器は長期保管時以外にも使えますので、ひとつ持っておくと良いかもしれません。
少々高額ですが、車のバッテリーにも使用できるTecMateのオプティメイトは使い勝手も良くおすすめです。
タイヤの空気を入れておく
タイヤもバッテリーと同様に、長期間放置しておくと自然と空気が抜けて行ってしまいます。保管前には、空気をしっかりと充填しておきましょう。
空気圧が低いままで放置しておくと、タイヤの変形にもつながります。
また、もしセンタースタンドがある場合には、センタースタンドを立てて保管しておく方が、良いでしょう。タイヤやサスペンションへの負荷が少なくなります。
タイヤワックスを塗っておくこともひび割れ防止などには効果的です。
油分を足しておく
長期保管の大敵は湿気です。保管中の錆を少しでも防ぐために、各部に油分を足しておきましょう。可動部の固着を防ぐ対策にもなります。
まずはきちんと洗車をして汚れをしっかりと落とします。洗車後は水分が残らないようにしておく事が重要な事は言うまでもありません。
ワックスやコーティング剤などを使用することもおススメです。
ワコーズのバリアスコートは、樹脂や塗装面、金属面などにも使え、使い勝手も良いのでおすすめです。
クラッチワイヤーやアクセルワイヤーには注油をします。また、チェーンも錆が出やすく目立つポイントです。しっかりとチェーンの洗浄とチェーンオイルを塗布しておきます。
また、スイッチ周りやメッキ部分などへの錆止め潤滑剤を挿しておくのも良いでしょう。
できれば屋内保管がよい
さて、いよいよ保管ですが、できる事なら屋内保管がベストです。
屋内保管の場所が確保できない場合、もし、資金的に余裕があれば保管してくれる外部ガレージに依頼するのもひとつでしょう。東北、北陸の雪の多い場所の場合、冬季預かりサービスを行っているバイクショップも在ります。
屋内保管が困難な場合には、最低限バイクカバーを掛けるようにします。
野ざらしにしておく事は絶対に避けましょう。野ざらしにしておくくらいなら、売ってしまった方が良いくらい、あっという間に劣化してサビだらけになってしまいます。
バイクカバーで対応する時は、カバー選びも重要です。安かろう悪かろうではありませんが、安価なカバーでは、十分な保管対策にはならない事がほとんどです。ある程度の費用が掛かったとしても、防水機能、撥水機能、紫外線対策がしっかりしたバイクカバーを選びます。
また、地面は湿気がたまらない場所が前提です。土や砂利の場所では、雨が降った後に水分が蓄積され、蒸発する際にバイクの錆にも影響が出ます。カバーをしていると中に湿気が溜まる原因にもなります。
コンクリートの場所や、湿気がたまりそうな場所であれば大きな鉄板を敷いておくなどの工夫も効果的です。
屋外でも、屋根がある事、長期であれば壁もあるのがベストです。直接、雨風にさらされないようにしておく事が必要です。
また、カバーの掛けっぱなしと言うのが意外と湿気がこもります。定期的にカバーを外し、バイクの状態をチェックすることも大事です。
全く乗らない期間が長い時は一旦廃車もあり
1年、またはそれ以上の長期間乗らない想定であれば、一旦廃車(一時抹消)してしまう方が良い場合もあります。
バイクの場合には、毎年4月の時点で軽自動車税の支払い義務が発生します。
一旦廃車(一時抹消)して、ナンバーを返納すると税金の支払いが無くなりますので、節約になる場合もあります。
ただ、一時抹消してしまうと、再び乗る時には再登録の手続きをしなくてはなりませんので、急に乗りたくなってもすぐには乗れません。
保管期間(乗らない期間)を考慮して、場合によっては一時抹消も検討してみても良いかもしれません。
長期保管後に乗る時には
長い保管期間が終わり、再び乗る時には各部の点検をしっかりとしてから乗り出します。
タイヤの空気圧のチェックや、各部の注油、グリスアップが必要かのチェック、バッテリーの電圧チェック、また、ガソリンの状態などは問題ないか。
ガソリンは腐ってなくても、保管期間が長い場合には、できれば新しいガソリンを入れる方がベターです。また、保管前にオイル交換をしてなければ、オイル交換もしたほうが良いでしょう。 しっかりと暖気をし、エンジン内にオイルを行き渡らせて調子を見ながら乗り始めます。
まとめ:乗らないバイクは劣化する!できる限りの対策を!
基本的には、乗らない期間が長ければ長いほど、バイクはどんどん劣化していきます。
そのため、やむを得ず乗れないという場合には、できる限りの対策をして、バイクをフレッシュな状態で保っておくことが重要です。
長期不在にするような場合でなければ、乗らなくても定期的にバイクの状態をチェックできればベストです。
降雪地域などの冬季保管の場合には、思い切って乗れない間に普段なかなかできないメンテナンスを行うのもおススメです。