バイクに乗っていると「クラッチが滑る」と言う症状が出る事があります。
よく、ベテランライダーやバイク屋さんが
「クラッチ滑りが出始めてるね」
「クラッチが滑ってるな~」
なんて言っている事を聞いたことがあるかもしれません。
ただ、クラッチが滑ると言われても「何のことだかわからない??」と言う人も多いのではないでしょうか。
そのため、ここでは
などについて詳しく解説しています。
バイクの「クラッチが滑る」とは何?
そもそもクラッチとは、エンジンとミッションの間にあって、エンジンの動力をミッション側(タイヤ側)へ伝えるための「動力伝達装置」のこと。
このクラッチは、いくつかの細かいパーツによって構成されていますが、通常は
と言う円盤上の部品が交互に重なるように入っています。この2種類のプレートをまとめてクラッチ板(クラッチ盤)と呼んでいます。
クラッチレバーを握っている(切っている)時は、クラッチ板は離れた状態になりエンジンの動力が伝わりません。
そのため、ギアが入ったまま停止していても、クラッチを切っていればエンストしないということですね。
一方、クラッチを繋いだ状態では、クラッチ板が密着して摩擦によってエンジンの動力がミッション側(リアタイヤ側)にきちんと伝わります。
ただ、この時にクラッチ板の摩耗や何かしらの原因で、しっかりと密着せずに滑ってしまう事があります。
つまり、クラッチ板が滑ってしまい、エンジンの動力が正常に伝わらないことを「クラッチが滑る」と言っているという訳です。
クラッチが滑るとどんな症状が出るの?
では、クラッチが滑ってしまうとどのような症状が出るのでしょうか。
代表的な症状としては
と言うような事が挙げられます。
しっかりとクラッチ板が密着できていないので、普通に操作していても「半クラッチ」状態になる事があるというイメージです。
また、クラッチ滑りの初期症状は、走行中やギアチェンジの時に感じるケースが多いと言えます。
そのため、バイクを発進させるときにクラッチ滑りを感じるようになるのは、かなり症状が悪化している状態です。
そのまま放置しておくと、最悪はバイクの発進ができなくなってしまうので早急に修理が必要です。
クラッチ滑りの確認(判断)方法は?
クラッチ滑りは初めのうちは、初心者ではなかなか気付かないかもしれません。
なぜなら、初期症状の段階では、普通に走れてしまう事が多いためです。
ただ、なんとなく「クラッチが滑っているかな?」と感じた時の確認(判断)方法があります。
このようにした時に、レスポンス良くスムーズに加速すれば、クラッチ滑りの症状は無いと言えます。
ただ、回転数だけ上がったり、加速が後から遅れて付いてくるようならクラッチ滑りの症状の可能性が高いです。
また、別の方法としては、
正常であれば、ブレーキを掛けているのでエンストしてしまいます。
ただ、なかなかエンストをしないで回転数が上がって行くようであれば、クラッチが滑っていると言えるでしょう。
試してみても良くわからない場合には、ベテランのライダーに乗ってもらうか、バイクショップに見てもらうと良いでしょう。
クラッチが滑ってしまう原因は?
クラッチ滑りが起こってしまう原因は複数あるのですが、良くあるケースとしては以下のような事が考えられます。
クラッチ板が歪んだり摩耗して擦り減っている
クラッチ板のうち、フリクションプレートには摩擦力を上げるためにフェーシングと言う素材が貼り付けられています。
そのため、摩耗することでクラッチ板の摩擦力が弱くなると、クラッチ滑りの原因になると言うことですね。
また、フリクションプレートやスチールプレート自体が歪んだり変形してしまう事も、クラッチ滑りの原因となります。
クラッチスプリングの「へたり」や損傷
クラッチが繋がっている状態の時には、クラッチ板が密着しているのが正常です。
この、クラッチ板が密着するように、押している部品がクラッチスプリング。
そのため、このスプリングに「へたり」や損傷がでてしまうと、クラッチの圧着力が弱くなってしまいます。
そうなると、フリクションプレートとスチールプレートの摩擦力も落ちて、クラッチが滑ってしまうと言うことになります。
クラッチ板の焼き付き
クラッチ板の摩耗やスプリングがヘタり以外では、クラッチ板が焼き付いてしまうと言うケースもあります。
焼き付きとは、
このような事が要因で、異常な摩擦熱が発生することによるものです。
半クラッチの使い過ぎによる「焼き付き」の場合、新車でも新品クラッチにしたばかりでも起こりえる現象です。
特にバイクに乗り始めで、半クラッチを多用しがちなライダーに多いと言えます。
焼き付きの場合には、クラッチを開けると焦げた匂いがする事も多いです。
この場合には、クラッチ板の交換が必要になる事に加え、熱によって他の部分に影響がないかをチェックする必要があります。
クラッチワイヤーの調整の不具合
クラッチ滑りではなく、クラッチワイヤーに不具合がある事で「クラッチ滑りの症状がでる」と言うケースもあります。
一般的には、クラッチを繋いだり切ったりする時は、クラッチレバーとクラッチワイヤーの動きによって操作しています。
ただ、この時にワイヤーの動きが不十分で、「繋いでるつもりが半クラッチ状態になってしまっている」と言うことも考えられます。
具体的には
このようなことが考えられます。
クラッチを開けてクラッチ板をチェックするよりも、クラッチワイヤーの状態を確認する方が簡単です。
そのため、「クラッチ滑りかな?」と思ったら、まずはクラッチワイヤーのチェックを先にしてみると良いでしょう。
クラッチ滑りの修理・交換費用はどれくらい?
クラッチ滑りが起きてしまった時には、基本的にはクラッチ板の交換やスプリングの交換が必要になります。(※クラッチワイヤーの不具合だったケースを除く)
クラッチの交換はそれほど複雑ではないのですが、もし、自分でチャレンジする場合には事前に必要な手順や部品を確認しておくことをおススメします。
難易度としては中級以上と言えるので、一般的にはショップにお願いすると言う人が多いと思います。
その場合の費用としては、
と言うのが一般的な相場と言えます。
クラッチ自体は、それほど頻繁に交換が必要になる部品ではありません。
そのため、クラッチを開けた時には、クラッチ板もスプリングもまとめて交換してしまうのが一般的です。
また、オイルを抜いてから作業するので、新たに入れるオイルの費用も掛かると思っておいた方が良いでしょう。
当然、バイクによって部品にもある程度の価格差はありますし、工賃にも差があるのは事実です。
ただ、クラッチ板とスプリングの交換だけであれば、部品代と工賃合わせて4~5万円くらいと言えます。
もし、クラッチハウジングやクラッチハブと言うような、他の部分まで交換が必要になってしまう重症なケースだと、更に数万円が掛かるケースもあります。
そのため、クラッチ滑りが出始めたら、なるべく早めに対応をするようにしましょう。
バイクのクラッチ交換の時期やタイミングってどれくらい?
よくある質問として、
「クラッチの交換時期はどれくらいですか?」
「何キロ走ったらクラッチの交換が必要ですか?」
という質問があります。
ただ、これに答えるのは非常に難しいと言わざるを得ません。
なぜなら、バイクの運転の仕方によってかなりの差が出るためです。
一般には、クラッチはそれほど頻繁に交換が必要になる部品ではありません。
4~5万km乗っても交換が不要なケースもありますし、新しいバイクに乗り変えるまで一度も交換しなかったという人も居ます。
一方で、1万kmちょっとでクラッチの焼き付きを起こしてしまう人も居るのです。
そのため、クラッチの交換時期は、「滑りの症状が出始めたら」と言うのが正解かもしれません。
まとめ
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