バイクのカタログや諸元表(スペック)に「圧縮比」という項目があります。
この圧縮比ですが、
「圧縮比という言葉はなんとなく聞いたことがあるけど、いまいち良く分からない」
という人もいれば、
「圧縮比って何?」
という人も居るでしょう。
そのため、ここでは
などについて、わかりやすく解説しています。(初心者向けです。)
バイクの圧縮比とは何?
圧縮比とは、エンジンの燃料である混合気をどれくらい圧縮しているかを表す比率(数値)のこと。
通常、エンジン内のピストンが上昇することでシリンダー内(燃焼室)の混合気は圧縮されます。
この混合気の容積が最も大きくなる瞬間と、最も小さくなる瞬間の比率が圧縮比です。
例えば、圧縮比が「10:1」の場合だと、ピストンが最も上がった時に燃焼室の容積が最も下がった時の10分の1になると言うわけですね。
あくまでも一般論ですが、圧縮比が高い方が、パワーが出るとされています。
また、圧縮比は「10:1」や「12:1」と表示される場合もあれば、単純に「10」や「12」と表示される場合もありますが、意味は同じです。
圧縮比の計算方法
圧縮比の計算方法は
圧縮比=(燃焼室容積+排気量)÷燃焼室容積
と言う式で算出します。
圧縮比とバイクの性能の関係は?
そもそも、混合気を圧縮する目的は何でしょうか?
凄くシンプルに言うと、混合気は圧縮することで燃えやすくなり、爆発力が上がります。
つまり、混合気を圧縮することで運動エネルギーを高める事ができるというわけですね。
そのため、「圧縮率が高い(大きい)方が、馬力がアップする」と言うのが一般的です。
ただ、これはあくまでも一般論です。
あまりにも圧縮比が高くなりすぎると、
という事もあります。
そのため、圧縮率が高ければ高いほど良いのかと言うと、そうでもないと言うことですね。
また、当然ですが馬力は排気量によっても変わってきます。
例として、ホンダのバイクで見てみましょう。
車種 | 圧縮比 | 最高出力(kw)[馬力(ps)]/rpm |
CB1300 SUPER FOUR | 9.6 | 83[113]/7,750 |
CBR1000RR-R | 13.6 | 160[218]/14,000 |
NC750X | 10.7 | 43[58]/6,750 |
GB350 | 9.5 | 15[20]/5,500 |
Rebel 250 | 10.7 | 19[26]/9,500 |
PCX125 | 11.5 | 9.2 [12.5] /8,750 |
スーパーカブ50 | 10 | 2.7[3.7]/7,500 |
CB1300SuperFourのカタログスペック上の圧縮比は9.6(9.6:1)。
これはスーパーカブの圧縮比より小さいですよね。
ただ、馬力は何十倍もあります。
排気量や気筒(シリンダー)の数が大きく異なるので、当たり前と言えば当たり前なのですが・・・。
単純に圧縮比が高ければ馬力も大きいとは言えない事例ですね。
ただ、同じ排気量、気筒数であれば、圧縮比が高い方が馬力が大きいというのが一般的でしょう。
関連記事≫ バイクの馬力とトルクって何?違いをわかりやすく解説
圧縮比が高いバイクはどんな車種?
圧縮比の事が分かってくると、「圧縮比が高いバイクってどんなバイク?」と気になる人も多いでしょう。
一般的には、大きな馬力を求められるスーパースポーツなどは、圧縮比が高く設計されています。
参考までに、各メーカーのバイクで馬力の高い「リッターSS」クラスの圧縮比と馬力をピックアップしてみました。
(おそらく各メーカーでトップの圧縮比を持つバイクではないでしょうか。)
車種 | 圧縮比 | 最高出力(kw)[馬力(ps)]/rpm |
CBR1000RR-R | 13.6 | 160[218]/14,000 |
YZF-R1M | 13 | 147[200]/13,500 |
GSX-R1000R | 13.2 | 145[197]/13,200 |
ZX-10R | 13 | 149[203]/13,200 |
NINJA H2 SX SE | 11.2 | 147 [200]/11,000 |
ちなみに、スーパーチャージャーを持つカワサキのH2。
これは、もともと混合気を圧縮してからエンジンに送り込む仕組み。そのため、圧縮比は低めに設計してあるようですね。
バイクの圧縮比を上げる事はできる?
圧縮比を高める事でパワー(馬力)がアップするのであれば、
「今乗っているバイクの圧縮比を上げたい!」
と言う人も居るかも知れません。
あとから圧縮比を上げる事が可能なのでしょうか。
結論としては、カスタムで圧縮比を上げる事は可能です。
ハイコンプ(高圧縮)化と言われるカスタムですね。アフターパーツでハイコンプキットなども販売されています。
具体的には高圧縮型(ハイコンプ)ピストンに交換するのが、もっとも一般的な手法と言えるでしょう。
ハイコンプピストンは、通常のピストンより上部が盛り上がった形状をしています。
つまり、ピストンの上部が大きくなる事で、燃焼室の容積を減らすという事ですね。
ただ、エンジンの圧縮比を上げるという事は、そう簡単な事ではありません。
エンジンを開けるという作業が必要な事はもちろん、しっかりとした知識がないと、逆にエンジン性能の低下や、エンジン破損の原因にも繋がります。
そのため、(バイクに詳しくない場合で)ハイコンプ化に興味がある場合には、しっかりとした知識と技術を持ったショップに相談することをおススメします。
まとめ
普段バイクに乗っていても、圧縮比など気にしないと言う人も居ると思います。(むしろその方が多いのでは?)
日常の足や、のんびりツーリングを楽しむライダーには、あまり関係のない数値と言えるかも知れません。
ただ、知識として知っておくと良いかも知れませんね。
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