昨今、ヤマハのトリシティやNIKEN(ナイケン)など前二輪のバイクが注目を集めています。
また、原付だとホンダのジャイロは昔からある後二輪の三輪バイク。
それから、ハーレーのラインナップにはトライクシリーズもあります。
このように、3輪のバイクやトライクで気になるのは「乗るために必要な免許」ではないでしょうか。
バイクの免許で乗れるものや、車の免許で乗れるもの。同じ三輪でも必要な免許が異なります。
「いまいちルールが良く分からない・・・。」
そのような人のために、ここでは
などについて詳しく解説しています。
三輪のバイクや乗り物にはどんな種類がある?
冒頭に触れたように、3輪のバイクや自動車には、色々な種類があります。
例えば、以下のような感じです。
これらは全て車輪が3つです。
種類も色々あれば、排気量もバラバラですね。
3輪のものは全て同じ免許が必要!と言うのであれば簡単な話ですが、実は意外と複雑なルールがあるのが現状です。
そのため、ひとつずつ順を追って解説していきましょう。
トリシティやNIKENなど「前二輪の三輪バイク」に必要な免許
まず最初は、前二輪の3輪バイク。
代表的なものはヤマハのトリシティ、NIKEN(ナイケン)、ピアジオのMP3などでしょう。
この中では、ピアジオのMP3が前2輪の先駆けですね。
おそらくですが、日本国内で発売されたのが、2007年頃だったと記憶しています。
ヤマハのトリシティの発売が2014年でしたので、かなり先に販売されていたことになります。
これらの前二輪のバイクは、「特定二輪車」と呼ばれる区分で、必要な免許はバイクの免許になります。
もちろん、バイクの排気量によって、小型限定二輪免許が必要乗れるか、普通二輪免許か、もしくは大型二輪免許が必要なのかが変わってきます。
また、トリシティやMP3はスクータータイプなのでAT限定の二輪免許で乗れます。
ただ、NIKENはクラッチ操作があることと、排気量制限にも引っ掛かるので、AT限定では運転することができません。
(2019年10月時点ではAT限定大型二輪免許で運転できるのは650㏄まで。2019年12月より排気量制限がなくなる予定)
つまり、最低限必要な免許区分は
となります。
上記のように、「特定二輪車」は排気量やクラッチ操作の有無で違いがありますが、基本的にバイクの免許で運転が可能です。
特定二輪車とは何??
先ほど紹介した前二輪のバイクは、「特定二輪車」に指定されています。
この「特定二輪車」について、少し詳しく解説しておきましょう。
実は、もともとピアジオのMP3が発売された頃は、法律上「車の免許」で運転が可能でした。
ただ、車体の特性や運転方法が極めてバイクに近いと言うことで、2009年に法改正がされたと言う経緯があります。
道路交通法施行規則の第二条では、自動車の種類について細かく定めています。
そこに、以下の条文が追加されたと言う訳です。
車体の構造上その運転に係る走行の特性が二輪の自動車の運転に係る走行の特性に類似するものとして内閣総理大臣が指定する三輪の自動車については、二輪の自動車とみなして、この表を適用する。
引用:道路交通法施行規則
つまり、「車体の構造も運転方法もバイクに近い三輪の車は、バイク(二輪)とみなします」と言うことですね。
また、この「内閣総理大臣が指定する三輪の自動車」は以下のように指定されています。
上記の条件を全て満たす三輪の車両は、二輪の自動車とみなすと言うことですね(特定二輪車)。
もし、今後も前二輪のバイクが新たに販売された時は、特定二輪車の条件に該当していればバイクの免許で運転ができると言う訳です。
ハーレーなど「後二輪のトライク」に乗るために必要な免許
前二輪に対して昔からあるのが、後2輪の「トライク」です。
この「トライク」は普通自動車免許(車の免許)で運転することが可能です。
違う言い方をすると、バイクの免許では運転をすることができません。
また、例えばハーレーが販売しているトライクや、アメリカンバイクを改造したトライクで、クラッチ操作が必要なものはAT限定の普通自動車免許では運転ができません。
ただ、ビックスクーターを改造したようなAT車のトライクであれば、AT限定の普通自動車免許で運転も可能です。
つまり、トライクの運転に必要な免許は
と言うことになります。
ただ、後二輪でも、前述の「特定二輪車」の条件を満たすものであれば、必要な免許は二輪免許になります。
トライクは道路運送車両法では「側車付き二輪車」に該当
道路交通法では、「特定二輪車に該当しない三輪の自動車」は「自動車」の扱いです。
そのため、トライクは車の免許で乗る事ができますし、ヘルメットの着用義務もないと言うことですね。
ただ、少々複雑なのは、道路運送車両法では以下のように記載があります。
四 「側車付二輪自動車」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
引用:道路運送車両の保安基準の細目を定める告示第2条
イ 直進状態において、同一直線上にある2個の車輪及びその側方に配置された1個(複輪を含む。)又は2個(二輪自動車の片側の側方に備えたものに限る。)の車輪(以下「側車輪」という。)を備えた自動車
ロ またがり式の座席、ハンドルバー方式のかじ取装置及び3個の車輪を備え、かつ、運転者席の側方が開放された自動車
上記の「ロ」は、まさにトライクの事ですね。つまり、
となります。
どのような影響があるかと言えば、例えば「車検」。
車検制度や保安基準を定めているのは道路運送車両法ですから、トライクの車検は「側車付二輪自動車」のルール。
もし、トライクの排気量が250cc以下なら車検はありません。
また、自賠責保険は二輪車の扱いになっています。
Cam-an(カンナム)など「前二輪のトライク」に必要な免許
良くある一般的なトライクに対して、前輪が2つあるトライクもあります。
「逆トライク」なんて呼ばれることもありますね。
代表的なものは、can-am(カンナム)のスパイダー。日本ではBRPジャパンと言う会社が販売しています。
このような前二輪のトライクでも、基本的には後二輪のトライクと同様に、車の免許で運転が可能です。(二輪免許では運転ができない。)
前二輪や後二輪で混乱しますが、基本的な免許の考えとしては「特定二輪車に該当しない3輪は、普通自動車扱い」と言うことですね。(道路交通法上)
ジャイロなど「三輪の原付」に必要な免許
原付バイクの3輪と言うと、ホンダのジャイロシリーズが有名ですね。
ジャイロアップ、ジャイロX、ジャイロキャノピー。(ジャイロアップは生産終了。)
また、昔はロードフォックスなんていう3輪スクーターもありました。
3輪の自動車の場合、「特定二輪車」に該当するか否かで、必要な運転免許が変わります。
ただ、50㏄以下の場合には自動車ではなく、「原動機付き自転車」の区分になります。
そのため、特に難しく考える必要はありません。
50㏄なら全て原付免許で運転ができる!と言うことですね。
もちろん、現在の道路交通法では普通自動車免許を持っている人は原付(50㏄以下)の運転が可能です。
ちなみに、50㏄の三輪を「ミニカー登録」すると、普通自動車免許が必要になります。
ミニカー登録については、下記の記事で詳しく解説していますので、参考にしてみて下さい。
サイドカーの運転に必要な免許
サイドカーと言うと、少しクラシックなイメージを持つ人が多いのでは。
ただ、昔はバイクと言えばサイドカーが主流でした(本当に昔の話です)。
バイクの事を単車とも言いますが、「単車」の由来はサイドカーの存在に大きく関わっているのです。
関連記事≫【単車】【オートバイ】【バイク】に違いは?意味や由来を解説
少し話が逸れましたが、サイドカーの場合には、エンジンの駆動方式によって必要な免許が変わります。
例えば、普通のオートバイに後付けで側車を付けたケース。つまり、側車を外しても走行が可能な駆動方式になっているサイドカーです。
これはバイクの免許で運転が可能です。
一方で、側車のタイヤも駆動するケース。側車の切り離すと、走行ができないタイプ。
この場合には、普通自動車免許がないと運転ができません。
現在でも新車で購入できるサイドカーに、(URAL)ウラルと言うメーカーがあります。
このウラルのサイドカーは
の2種類があります。
この場合、道路交通法では、前者は側車付きの二輪車の扱いになり、後者は3輪の自動車という扱いになると言うことです。
つまり、
1WDは排気量に応じた二輪免許が必要で、2WDは普通自動車免許が必要となると言うことですね。
三輪バイクやトライクに必要な免許のまとめ
ここまでの内容をまとめると、以下の表のようになります。
三輪のタイプ | 必要な免許 | 備考・例 |
前二輪のバイク | 排気量に応じた二輪免許 クラッチ操作が無ければAT限定でも可 | 特定二輪車に該当する3輪の自動車 ヤマハのトリシティ、NIKEN、ピアジオのMP3など |
前二輪のトライク | 普通自動車免許 クラッチ操作が無ければAT限定でも可 | can-amスパイダー |
後二輪のトライク | 普通自動車免許 クラッチ操作が無ければAT限定でも可 | ハーレーのトライグライド アメリカンやビックスクーターなどをベースにした トライクカスタム |
サイドカー | 排気量に応じた二輪免許 もしくは 普通自動車免許 | 駆動方式によって必要免許が異なる ウラル |
三輪の原付 | 原付免許 | ホンダのジャイロX、ジャイロキャノピー ※ミニカー登録をすると普通自動車免許が必要 |
また、もし、新たに三輪のバイクやトライクの購入を考えている場合には、必要免許だけではなく、車検や任意保険、自賠責保険の扱いなどもしっかりと確認してから購入するようにしましょう。