バイクのメンテナンスの基本とも言われるオイル交換。
「オイル交換が大事だと言うのはわかるけど、エンジンオイルって色々ありすぎて良く分からない・・・。」
バイクに乗り始めの時には、良くある悩みではないでしょうか?
バイクショップにお任せでオイル交換をするのも問題はありませんが、基本の知識として多少はオイルの事を知っていると、オイル選びも楽しくなるかもしれません。
そのため、ここでは
についてわかりやすく解説しています。
※4サイクルオイルの前提で解説しています。
バイクのエンジンオイルの種類は3種類
まず、バイクのエンジンオイルには
の3種類のベースオイルがあります。
ベースオイルとは、エンジンオイルの基本となるオイルのこと。これらのベースオイルに、色々な添加剤を加えてエンジンオイルになると言う事ですね。
つまり、「ベースオイル+添加剤」でエンジンオイルが構成されていると言う事です。
それぞれの違いについて、解説してきましょう。
化学合成油
化学合成油とは、その名のとおり、化学的に合成されたベースオイル。
原油をもとに製造されていますが、不純物などを徹底的に取り除いてあり、耐熱性や潤滑性に優れた「高性能オイル」です。
その分、他のオイルに比べると値段も高いです。
鉱物油
鉱物油も原料は原油。
原油を蒸留して製造した、もっともスタンダードなベースオイルです。性能面で化学合成油や部分合成油に劣りますが、普通に使用する分には全く問題ありません。
価格も3種類の中ではもっとも安価です。
部分合成油(部分化学合成油)
部分合成油は、鉱物油と化学合成油を配合して作られたオイルです。
それぞれの良い面、悪い面をバランスよく補っているオイルと言えるでしょう。
配合の比率などで、性能や価格に差が出てきます。
エンジンオイルの種類(油種)の選び方
基本的には、エンジンオイルは鉱物油でもまったく問題ありません。
例えば、ホンダのCBR1000RRやヤマハのYZF-R1などの大排気量SSバイクでも、取扱説明書やサービスマニュアルの「推奨オイル」に鉱物油が記載されているくらいです。
ただ、性能面で言えば、部分合成油や化学合成油の方が良いのも事実。
サーキットの走行や、スポーツバイクでマシンの性能をしっかり引き出したい場合には、化学合成油を入れてみて違いを体感できるか試してみても良いでしょう。
そこまで走りにこだわる訳ではないけど、ロングツーリングに頻繁に行くので、多少は良いオイルを入れたい!
そんな時には部分合成油でも良いかも知れません。
一方で、普段通勤や通学にしか使わないと言う場合には、鉱物油で充分です。
また、旧車など古いバイクの場合には、化学合成油だとシール類に影響を与えてしまったり、オイルの分子が細かすぎて、オイル漏れの原因になることもあります。
単純に、化学合成油を使えば良いと言う訳ではなく、バイクに適した油種を選ぶのが重要と言う事ですね。
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エンジンオイルの粘度って何?
オイルのベースオイルは3種類ですが、もっと色々な種類があるのが「粘度」です。
粘度とは、簡単に言うとオイルの粘り(硬さ)のこと。
エンジンオイルを選ぶときに、「20W-50」「SAE50」などの表記がされていますが、これがオイルの粘度を表しています。
また、この粘度には
のふたつがありますので、順番に説明していきましょう。
シングルグレードのオイル
粘度の表記で「SAE50」「SAE60」など、数字表記が1種類しかないのがシングルグレード。
これは、油温が100℃の時のオイルの硬さを表記しています。
また、SAEとはSAE規格のこと。
オイルの粘度は、米国自動車技術者協会(Society of Automotive Engineers)」が定めた「SAE規格」によって分類されているので、SAEと記載があると言う事ですね。
シングルグレードは基本的に、低温でも高温でもオイルの特性があまり変わらない、いつも硬めのオイルが一般的です。
オイルの性能も上がってきている中で、最近はシングルグレードのオイルを使う事は少なくなって来ています。
ただ、エンジンのクリアランスが大きめのバイクの場合、やや硬めのオイルが適している言う事で、旧車などの場合には今でも使うケースがあります。
マルチグレードのオイル
「20W-50」など、数字が2種類表記されているのがマルチグレードのオイルです。
表示のWはWinterの略で、ハイフンの左側が低温時の粘度を、右側が高温時の粘度を表しています。
低温粘度が低いほど、寒さに強いオイルと言えます。
寒いとオイルが硬くなってしまうのですが、低温粘度が低いオイルほどオイルが硬くなりにくい特性があります。
そのため、寒冷地でもエンジンの始動性が良くなったり、燃費の向上にもつながります。
一方、高温粘度が高いオイルは、熱に強いオイルです。
オイルは熱くなってくるとサラサラと柔らかくなるのですが、高温粘度が高いオイルだと熱くても粘度を保てると言う事です。
熱くなっても油膜が切れにくく、高速性能、耐摩耗性に優れていると言えます。
そのため、真夏と真冬では、粘度の違うオイルを使い分ける人も居ると言う訳ですね。
ちなみに、SAE規格が定める、外気温の目安は以下のようになっています。
「粘度の表記=気温」ではないので、少々わかりにくいですよね。
(※「10W-30」が「マイナス10℃~30℃」ではない。)
こうして見てみると、低温粘度と高温粘度の差が大きいオイルの方が、性能が良さそうな気がしますよね。
寒さにも、熱さにも強いオイルと言うイメージです。
ただ、そう簡単にいかないのがオイルの世界。
例えば、極端に高温粘度が高いオイルだと、オイルが硬すぎてエンジンの性能を発揮できないと言う事もあるのです。
エンジンオイルの粘度の選び方
オイルの粘度に関しては、オイルのメーカーを変えたりベースオイルを変えても、
のどちらかを選んでおけば良いでしょう。
国内メーカーの純正オイルも、基本的にはこの2つのどちらかです。そのため、日本に住んでいてよっぽどの寒冷地でなければ問題ないと思います。
ただ、空冷の大排気量エンジンのハーレーの場合には、20W-50のオイルが良く使用されます。
また、レースに出るとか、旧車に乗ってるとか、少々特殊なケースの時にはそのバイクにあった粘度もあります。
そのような時には、ショップに相談してみると良いでしょう。
エンジンオイルにはグレード(等級)もある
ベースオイルの種類、粘度の他にも表示されているものが「グレード(等級)」。
これは、オイルの品質や特性を等級で表示していると言う事です。
オイルのグレード表示に使われる規格については
のふたつが良く使われています。
API規格
API規格はアメリカ石油協会(American Petroleum Institute)が定めた規格です。
省燃費性・耐熱性・耐摩耗性などエンジンオイルに必要な性能を設定したもので、ガソリンエンジンの場合には「S」で始まり、「SA」から「SN」グレードの12段階で分類されています。
ガソリンエンジンの場合には、SNグレードが最高品質と言う事ですね。
JASO規格
JASO規格は、日本自動車規格(Japanese Automobile Standards Organization)によって定められたエンジンオイルの規格。
日本の規格と理解しておけば大丈夫です。
API規格では「バイク用」のエンジンオイルに求められる性能を全て検査できていません。
ただ、JASO規格ではバイク専用(4ストエンジン)の「JASO T903規格」を制定しています。
(※JASO規格は、車とバイク、さらにバイクでも2サイクルと4サイクルで異なる基準の規格を設けています。)
「JASOのT903規格グレード」は次の通りです。
JASO規格 | オイルの特性 |
MA | 高い摩擦特性を持っている |
MA2 | MAの摩擦特性の範囲内で粘度を高め(高域設定) |
MA1 | MAの摩擦特性の範囲内で粘度を低め(低域設定) |
MB | 摩擦特性が低め |
となっています。
JASO規格の場合には、性能の高さと言うよりも、あくまでもオイルの特性を表しています。
ミッションのバイクの場合には、MAグレードが推奨されています。これは、摩擦特性が低いMBグレードを使うとクラッチが滑ることがあるため。
逆に、エンジンの潤滑だけを行うスクーターの場合にはMBグレードが推奨されています。
スクーターにMAグレードを入れると、摩擦抵抗が増えて燃費が悪くなることもあります。
エンジンオイルのグレードの選び方
API規格については、あまり気にする必要はありません。
もちろん、グレードが高いものの方が品質が良いのですが、そもそも、API規格の検査を受けていないオイルもあります。
一方でJASO規格の場合には、バイクによっては「指定」されている場合があります。
ミッション車の場合にはMA、スクーターの場合にはMBと言うケースが一般的です。
指定されているグレード(規格)以外のものを入れると、クラッチやトランスミッションに不具合が出る事もあるので、必ず指定のオイルを使用しましょう。
まとめ
エンジンオイルには、ベースオイル、粘度、グレード(品質等級)など、様々な指標があります。
しかしながら、色々ありすぎて「結局どのオイルを選べば良いかわからない」と言う人も多いのではないでしょうか。
基本的には、サービスマニュアルに記載されている「メーカーの推奨オイル」を選んでおけば問題ありません。
もし、ショップにオイル交換をお願いしている場合には、お任せでお願いしても問題ないでしょう。
ただ、オイルの事が少しわかってくると、オイル選びも楽しくなってくると思います。
色々試しながら、自分の好きなオイルを見つけるのもバイクメンテナンスの楽しみ方と言えるでしょう。
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