最近のバイクのエンジン始動はセルフ式(セルモーター)が一般的です。
ただ、原付やSR400のように、今でもキックスターターを備えているバイクも存在します。(SRはキックのみ)
セルとキック併用なら、バッテリーが上がってしまった時には、キックスタートが非常に役立ちます。
また、SRやハーレーなど、敢えてキックスタートのバイクを選ぶファンも多くいます。
豪快にキックペダルを踏み下ろす無骨なアクションは、非常にカッコいい仕草ですよね。
ただ、キックスタートがなかなか上手くいかないと言う人もいるのは事実ではないでしょうか。
そのため、ここでは
等について詳しく解説しています。
バイクのキックスタートの仕組みとは?
まず、キックスターターとは、バイクのエンジンを足の力で始動させるための装置のこと。
キックスターターが備わっているバイクには「キックペダル」が付いていますよね。
この「キックペダル」を強く踏み下ろすことで、エンジン内部のクランクシャフト(ピストン)を強制的に動かすことができると言うわけです。
そもそもバイクのエンジンは、シリンダー内でガソリン(混合気)が爆発し、ピストンが上下運動を繰り返すことで動力を発生させています。
ピストンが激しく上下運動をすることで、クランクシャフトが回転します。
クランクシャフトの回転運動が、ドライブチェーンを伝わってリアタイヤを動かすと言うことですね。
ただ、エンジンを掛ける時には、一番最初にクランクを回す力が必要になります。
これが、セル付きのバイクの場合だと、バッテリーの電気の力とセルモーターがその役割を担っていると言うわけです。
一方で、セルモーターの力を借りずに、人の力(キック)でクランクシャフトを回転させるのがキックスタートと言うわけですね。
ちなみに余談ですが、昔は車でもクランク棒と言うものを使って人力でエンジンを掛けていました(セルモーターが実用化する前、本当に昔の話ですが。)
キックスタートでエンジンを掛ける方法
キックスタートでバイクのエンジンを掛ける方法は、シンプルに言えば「キックペダルを踏んでクランキングさせる」と言うことです。
クランキングとは、クランクシャフトを回して、ピストンを上下運動させること。
つまり、キックペダルを踏んでピストンを上下させると言うことです。
具体的な方法(手順)としては、
と言うのが基本の作動方法です。
原付スクーターの場合には、そこまで気にしなくてもガシャガシャとキックしていれば掛かってしまう事も多いです。
ただ、それなりの排気量があるバイクでは、しっかりとキックする時のポイント(圧縮上死点)を探り当てないとなかなか掛かりません。
これは、経験や練習によるところもあるのですが、慣れてくれば女性でもできるようになります。
キックでうまくエンジンを掛けるためのコツは?
キックでエンジンをうまく掛けるためには、経験と練習が大事です。
とは言っても、それでは元も子も無いので、いくつかコツを紹介しましょう。
と言うような感じです。
原付なら、足の力だけでもガシャガシャとキックすることも簡単です。
ただ、排気量が大きくなればなるほど、キックも重くなってきます。
そのため、足の力だけで踏み抜こうとしても、なかなか上手くいきません。シートに座ったままではなく、立った状態でペダルにしっかりと体重を乗せましょう。
また、ペダルは爪先や踵ではなく、土踏まずの位置に合わせること。この方がしっかりと体重が乗ります。
また、キックの勢いで足が滑るのも防止できます。
それから、キックペダルは真下に踏むのではなく、弧を描くような感じ。
「下におろす」のではなく、最後まで回転させるイメージで思い切り、且つ最後まで「踏み抜く」と良いと思います。
SRならデコンプを活用しよう
キックスタートのバイクの代名詞とも言えるのがSR400(500)。
インジェクションになった今でも、キックスタートにこだわっている伝統的なバイクですね。
ただ、SRの場合には「デコンプレバー」が付いています。
デコンプレバーとは、エンジンの排気バルブを強制的に開けるレバーのこと。デコンプレバーを握れば、圧縮が抜けてキックが柔らかくなると言うわけです。
また、SRの場合には、キックインジゲーターという「窓」が付いています。
ピストンが圧縮上死点にくると、黒い窓にシルバー(銀)の印が現れるので、簡単に圧縮上死点が合わせられると言うわけですね。
デコンプを使ったキックスタートの手順は以下の通りです。
デコンプがあれば、圧縮上死点に確実に合わせられて、且つ、圧縮が抜けてキックがしやすくなると言うわけです。
ここまで解説したのですが、非常にわかりやすい動画があったので貼っておきますね。
キックでエンジンが掛からない時のチェックポイント
キックスタートでエンジンが掛からないという場合は、いくつかの原因が考えられます。
キックのやり方が良くないと言うケースもあるのですが、それ以外にも要因は考えられます。
具体的にチェックしてみると良いポイントを、いくつか紹介します。
キーを回してない
ついうっかりキーをONにするのを忘れていた・・・。
初歩的ですが、意外と多いケース。何度もキックして汗だくになった後に気が付くと、恥ずかしいですよね。
また、キックスタートに限らずですが、エンジンが掛からない時の良くある原因については以下の記事にまとめていますので参考にしてみて下さい。
関連記事≫バイクのエンジンがかからない!原因と確認するポイントを解説!
圧縮上死点からキックを始めているか
SRのようにキックインジゲーターがあれば、間違える事はありませんが、キックを始める位置がずれている事も。
ピストンをしっかりと圧縮の上死点に合わせないと、なかなかエンジンは掛かりません。
本番のキックをする前に、何度か踏んでみてグッと重く(硬く)なる場所をしっかりと確認しましょう。
もし、なかなか感覚がつかめない場合には、バイクショップやエンジンが掛けられる友人などに見てもらうと良いでしょう。
失敗してプラグかぶりになっていないか(キャブ車の場合)
キャブ車の場合に多いケースが、プラグかぶり。
キックでなかなかエンジンが掛からず、なんども蹴っている内にプラグがカブってしまうと言うケースですね。
プラグがカブってしまうと、なんど蹴ってもエンジンは掛かりません。
プラグを交換したり、時間を置く必要があります。
関連記事≫バイクのプラグかぶり!症状や原因とかぶった時の対処法
ガソリンが薄くないか(チョーク)
これもキャブ車のケースになりますが、しばらく乗っていなかった場合や、寒い時期。
キックの動作自体は問題が無くても、エンジンが掛かりにくい事もあります。
このような時は、チョークをしっかりと引いて、混合気を濃い目にすると掛かりやすくなることも多いです。
また、気温の高い日や、走行直後の再始動時などは、チョークの引く量を調整しましょう。
キャブのフロート室内のガソリン調整
これもまたキャブ車の事例です。
キャブの中のフロート室には、常にガソリンが溜まっています。
ただ、乗らなった間に、蒸発して油面が下がってしまう事も。
そのため、燃料コックにPRI(プライマリー)があれば、PRIに切り替えて油面の正常化をすることで掛かりやすくなるケースもあります。
ちなみに、PRIは強制的にガソリンを流すコックの位置です。
関連記事≫バイクのリザーブタンクとは何?構造やコックの使い方を詳しく解説
また、長期間乗っていない場合には、フロート室のガソリンが変質してしまう事もあります。
このような時には、フロート室のガソリンをドレンから抜いて、新しいガソリンにしてしまうのも効果的です。
キックの力(勢い)が足りない
体重の軽い女性や、力の無い人に多いのが、このパターンです。
とは言っても、女性では無理と言うこと決してありません。
小柄な方でも、キックでエンジンを掛ける事は全然問題ありません。
むしろSRとかであれば、そんなに力は必要ではありません。(大きなハーレーとかになるとまた状況も違いますが)
ただ、キックする時に怖かったりして、勢いよくキックできていないケースも多いのは事実です。
思い切りも大事と言うことですね。
まとめ
最近は、バイクのキックスタートが付いている車種はどんどん減ってきています。
ただ、SRやW650などクラシック系のバイクや、オールドハーレーなど。
キックが付いているからこそ、そのバイクを選ぶという人もたくさんいます。
確かに、キックでエンジンを掛けると言う行為には、「カッコよさ」があり、魅了されるものがありますよね。
なかなか上手くエンジンが掛けられない場合には、ちょっとしたコツを掴めば上手くいくので、是非がんばってみてください!
関連記事≫キックスターターの取付(後付け)とキック付きの車種について解説