バイクに長いこと乗っていると、エンジンオイルの漏れや滲み(にじみ)が発生することがあります。
エンジンオイルの漏れや滲みは、軽微なものであれば緊急性を要さない場合も多いでしょう。
一方で、ひどくなってくると致命的な故障の原因になることもあります。
そのため、ここでは
などについて詳しく解説しています。
エンジンオイルが漏れやすい場所と原因
エンジンオイルが漏れたり滲んだりする原因は、ひとことで言うと「隙間があるから」。
エンジンは様々な部品が組み合わさって構成されています。
その部品同士の隙間を埋めるために「ガスケット」と呼ばれるようなシール(パッキン)が組み込まれ、密閉性を保っていると言うわけです。
しっかりと密封されていればオイルが漏れてくることはないのですが、シールが劣化してくると隙間ができてオイルが漏れてくると言うわけです。
エンジンオイルの漏れが発生しやすい場所と原因は次のとおりです。
エンジンオイルのドレンボルトからの漏れ
エンジンオイルを交換するときに、古いオイルを抜く場所が「ドレンボルト」。
ドレンボルトはエンジンの真下に付いていて、緩めるとエンジンオイルが抜けると言う仕組みになっています。
古いオイルを抜いた後には、当然新しいオイルを入れますのでドレンボルトをしっかりと締めておく必要があります。
そのため、
と言う事が原因で、オイルが漏れる事があります。
ドレンワッシャーとは、ドレンボルトを締める時に噛ませるワッシャーの事です。
ボルトを締めた時に、ワッシャーが圧縮されて隙間がなくなると言う事です。
このワッシャーは毎回交換をするのが基本ですが、使いまわしたりすると本来の密閉性を保てなくなることがあります。
ドレンボルトからオイルが漏れている時には、増し締めをするとオイル漏れが止まる(軽減)することもありますが、やってはいけないのが力任せに締め付ける事。
ボルトを舐めたりしてしまうと、高額な修理費用が掛かってしまいます。
新たにオイル交換をして、新品のドレンワッシャーに交換し、適切なトルクでドレンボルトを締めなおすようにしましょう。
エンジンヘッドからのオイル漏れ
エンジンの上部、シリンダーとヘッドカバーの境目もオイル漏れが起きやすい場所です。
ヘッドカバーとシリンダーヘッドには、ガスケットが挟まっています。
このガスケットは時間の経過とともに劣化してきます。硬くなったり縮んだりすることで隙間ができ、オイルが漏れてくると言う事ですね。
この場合は、ガスケットの交換をすると言う対処方法が一般的です。バイクに詳しくない場合には、ショップに頼むのが無難でしょう。
ガスケット交換だけの場合には、
が相場です。
ただ、バイクの種類やその他の作業(カウルの脱着が必要など)の発生の有無で、もっと費用が掛かるケースもあります。
オイルフィルターからのオイル漏れ
オイル交換をする時に、一緒にフィルター(エレメント)を交換する事も多いでしょう。(オイル交換2回に1度はフィルターも交換が一般的)
このオイルフィルターには、
の2タイプがあります(互換性はなし)。
どちらも、交換時の「うっかり」でオイル漏れの原因になることがあります。
まず、カートリッジ式。
最近主流のオイルフィルターで、丸ごと交換するフィルターです。このタイプの場合には、接続面の内側にOリングが付いています。
交換時は気密性を高めるために、このOリングにオイルを塗るのが一般的です。ただ、これを忘れるとオイルが漏れてしまう事もあります。
それから、内臓式のフィルターの場合。
こちらは、カバーを外してフィルターだけ交換するタイプです。内臓式の場合にもカバーの裏側にOリングが付属しているので、フィルター交換の時にはOリングも交換するのが基本です。
このOリング交換を忘れることで、オイル漏れの原因になると言う訳です。
また、フィルター交換をした後に発生しやすいオイル漏れですが、交換をしていなくても劣化で漏れが出る時があります。
シリンダーベースからのオイル漏れ
シリンダーの下側、シリンダーベースの接合面もオイル漏れが発生することがあります。
この場所も、基本的なオイル漏れの原因であるガスケットの劣化によって滲むことがほとんど。
年数が経過したことによる劣化の場合もあれば、オーバーヒートなどによる歪みも原因になることもあります。
関連記事≫バイクのオーバーヒートの原因や症状は?
シリンダーベースからの漏れは、酷くなるとエンジンの圧縮抜けにも繋がります。そのため、早めに対応しておきたい箇所になります。
対応方法がガスケット交換なので、部品代はそれほど掛かりませんが、エンジンを開けていく作業になりますので工賃はそれなりに掛かります。
一般的に、シリンダーベースのガスケット交換だけであれば、車種にもよりますが
くらいが相場でしょう。
ただ、エンジンを開けていきますので、他に調整や交換が必要な場所が見つかったり、ガスケット交換だけでは収まらないケースも少なくありません。
ちょっとしたオーバーホールになれば軽く10万円コースになることも。
もちろん、全てがこのようなケースになる訳ではありませんが、まずは、ショップに相談してみましょう。
エアクリーナーからオイルが漏れる
エアクリーナーからオイルが垂れてくると言うケースもあります。
これはブローバイガスと一緒にオイルもエアクリーナーに送り込まれてしまう事によって発生する現象です。
ブローバイガスとは、ピストンとシリンダーのすき間から漏れた未燃焼ガスのこと。通常はエアクリーナーに戻して、もう一度燃焼させる仕組みになっています。
つまり、普段は来ないはずのオイルがエアクリーナーに来て、垂れてきてしまうと言う事ですね。
良くある原因は、単純なオイルの入れすぎ。
オイルのレベルゲージを確認して、指定の範囲内に収まっているか確認してみましょう。
関連記事≫エンジンオイルを入れすぎた時の症状とオイルの抜き方
他には、エアクリーナーを違うタイプのモノに変更した時にも発生することがあります。
オイルの入れすぎや、エアクリの交換に心当たりがない場合には、他の原因を探る必要がありますのでバイクショップに相談してみると良いでしょう。
スプロケット周辺からオイルが漏れる
「エンジン側」のスプロケット周辺からオイル漏れが発生することも、比較的多い事象です。
この場合には、ドライブアクスルシャフトのシールの劣化の可能性が高いです。
ドライブアクスルシャフトはエンジン側スプロケットの軸になっている部品で、シャフトが回ることでスプロケットも回り、チェーンが動くと言う事ですね。
このシャフトの根元に付いているシールも、劣化によってオイル漏れを発生する原因になります。
ちなみに、このシールの劣化で漏れるのは「ミッションオイル」です。
この漏れの場合には、チェーンを伝ってオイルをまき散らしてしまう事もあります。
漏れを止めるにはシールの交換になります。
スプロケットを外したりする作業が発生しますが、ショップに頼む場合には、シール交換だけであれば
が相場でしょう。
オイル漏れの原因は多種多様
いくつかオイル漏れの原因を紹介しましたが、オイル漏れの原因は他にもたくさんあります。
バイクのエンジンは色々なパーツの組み合わせで構成されており、密閉性を高めるガスケットやシールは色々な場所で使われています。
ガスケットやシールが劣化すれば、そこからオイルが滲んだり漏れてくると言う事です。
また、オイルの種類を変えた時にもオイル漏れが発生することも。
例えば、(簡単に言うと)化学合成油は小さな隙間からでも漏れやすいオイルです。オイル交換をした後に、漏れや滲みが出てきた時には、オイルが原因と言う可能性もあります。
関連記事≫エンジンオイル【種類・粘度・グレード】を分かりやすく解説
他にも、立ちごけをした事が原因で、クランクケースからオイルが漏れるような事もあります。
関連記事≫バイクの立ちゴケの原因と防止法!コケてしまった時の対処法
オイル漏れが発生した時の対処法
では、オイル漏れが発生した時には、どのようにしたら良いのでしょうか。
まずは、オイルゲージを確認してオイルの量を確認しましょう。
多少漏れたくらいでは、オイルがスッカラカンになると言う事はありません。
また、多少減っているくらいでは大きなトラブルになるケースは少ないでしょう。
とは言え、オイル漏れに気づかなかった場合には、思った以上に減っていると言う事もあります。
オイルレベルが下限を下回っているようであれば、大きな故障を招く原因にもなりますので早めの対処が必要になります。
基本的には、
と言うのがオイル漏れを止める「基本」の方法です。(※もちろん、原因によっては異なる修理が必要になる事もあります)
場所によっては、比較的簡単にできる事もありますが、
このような場合には、バイクショップに相談してみる事をおススメします。
オイル漏れを放置しておくとどうなる?
中には、オイル漏れを気にせずに、そのまま走っていると言う人も多いです。
では、オイル漏れを放置しておくとどうなるのでしょうか?
オイル漏れを放置しておくと
と言えるでしょう。
例えば、エンジンが焼き付きを起こした場合には、直すとしても軽く10万円コース。修理もできずに、エンジンの載せ替えや廃車をしなくてはならない事も考えられます。
確かに、オイル量にさえ気を付けておけば、それほど深刻にならなくても平気な事もあるのは事実です。
ただ、エンジンオイルは良く「血液」に例えられますが、オイル漏れは常に血液が漏れている状態。
体(バイク)に良いわけはありませんよね。
早めに止血(修理)することをおすすめします。
添加剤を使えばオイル漏れは治る?
エンジンオイルの滲みや漏れに効果があるという「添加剤」が販売されています。
このような「漏れ防止の添加剤」を入れることで、オイル漏れは治るのでしょうか?
オイル漏れの添加剤には大きく2種類あり
です。
簡単に言うと、前者はエンジンオイルを「ねっとり」させて、漏れにくくするという事。
極端な例で言うと、サラサラっとした水より、ドロッとしたゼリー状の方が漏れにくいと言うイメージですね。
後者は、エンジンのシールやパッキンに直接作用し、化学反応によって膨張・修復させて「隙間を埋める」イメージです。
それぞれ、効果が出るケースもありますが、いくつか注意しなくてはならない事もあります。
上記の理由から、添加剤を使う場合には、きちんと特性を理解して使用することをおすすめします。
もちろん、効果が出る事も充分あるので否定している訳ではありません。
オイル「にじみ」程度でも修理はするべき?
ポタポタとオイルが垂れるようになったり、軽いオイルだまりができる位の「漏れ」なら修理を決断する人は多いでしょう。
一方で、軽く「にじんでいる」程度の時には、修理をするか迷いますよね。
結論から言うと、にじみがある時点で修理を考えた方が良いでしょう。
ただ、にじみの場所にもよるとも言えます。
ショップに相談したうえで、修理をするタイミングを決めると良いでしょう。
例えば、車検や定期点検のタイミングに合わせて修理すれば、工賃が安くなるケースもあります。
緊急性が低い分、計画的に修理をすると良いでしょう。
オイル漏れは車検に通らない?
オイル漏れがあると、車検には通りません。
そのため、車検の時にはオイル漏れを直しておく必要があります。
ただ、「程度による」というのも事実です。
多少の滲み程度であれば、検査を受ける前にサッと拭いてしまえば、難なく通ってしまうでしょう。
一方で、「明らかに漏れている」と判断されてしまえば、車検には落ちてしまいます。
どれくらいの量という「漏れの定義」がされているわけではありませんが、「オイル漏れ=車検には通らない」という事は把握しておいた方が良いでしょう。
そのため、軽度なオイル漏れの場合には、車検の時に合わせて修理をすると言うのもひとつの方法です。
関連記事≫バイクの車検の検査項目はどこ?チェックされるポイントを解説
まとめ
バイクに長いこと乗っていると、避けては通れないのがオイル漏れです。
前述のとおり、オイル漏れの原因のほとんどは、ガスケットやシールの劣化。
時間がたてばどうしても劣化してしまうのは、仕方がないことです。
漏れや滲みを発見した時には
をするようにしましょう。