中古のバイクを買う場合に、選ぶ基準はいくつかあると思います。
その中で、「走行距離」を重要視している人は多いのではないでしょうか?
確かに、バイクの状態を推測するには、「どれくらいの距離を走ったバイクなのか」という点は大きなポイントになります。
しかしながら、実はバイクの場合、走行距離をあまり信用しすぎない方が良いケースもあるのです。
ここでは、
などについて、一般の方はあまり知らないバイク業界の事情をもとに解説しています。
中古バイクを買う時の走行距離の目安とは?
まず、中古バイクの走行距離の目安についてです。
走行距離は、バイクの種類や乗り方によって大きく変わってきます。
種類とは、大型バイクなのか、スクーターなのか、ツーリングモデルなのかスポーツモデルなのかと言う違いですね。
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そのため、走行距離の目安は「あくまでも一般論」である事を前提にお話ししていきます。
ちなみに、中型~大型のバイクの前提での目安です。
もし、小排気量のスクーターなどであれば、それぞれ半分くらいを目安と考えておくと良いでしょう。
バイクの寿命は100,000㎞
ひとつの目安として、10万㎞がバイクの寿命と言われています。
ここまで走っているようなバイクは、相当走っているバイクの部類になります。
このくらいになると、エンジン内部の部品の劣化や消耗が激しくなっている為、既に大掛かりな修理やオーバーホールを経験している事が多いバイクでしょう。
逆に言えば、10万㎞走るには、それなりのメンテナンスをしてなければ状態を維持できないのが一般的です。
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10万km走っていても、しっかりオーバーホールやメンテナンスをしていれば、まだまだ走るバイクもあります。
バイク便の車両などは20万㎞というようなバイクも在るくらいです。
しかしながら、しっかりメンテナンスをしていても、中古車で10万㎞であれば、いつ大きな不具合・故障が出てもおかしくないと思った方が良いでしょう。
購入するにはそれなりの覚悟が必要です。
エンジンの異音や部品の劣化が出てくるのが30,000~50,000㎞
3万㎞を超えたくらいから、エンジン内のパーツの劣化や消耗、異音が気になるようになってくる走行距離です。
乗り方によっては、クラッチの摩耗や滑りなどの不具合が出ていてもおかしくありません。
3~5万㎞のバイクを中古で購入する場合には、今までどのようなメンテナンスがされてきたのかを良くチェックしておきましょう。
そうしないと、購入後すぐに、大きな修理費が掛かってしまう可能性もあります。
3~5万kmのバイクは、ショップで買うならば、各部しっかりと点検をしてもらった方が良い走行距離ですね。
ただ、きちんとメンテナンスしている車両であれば、まだまだ元気に走る部類です。
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10,000㎞前後ならまだまだ大丈夫
10,000kmくらいであれば、まだまだ心配することなく購入できる距離。
外車の大型バイクだと、1万kmくらい走ってようやく慣らしが終了!エンジンが馴染んでくるよね!なんて言うライダーもいるくらいです。
(車種にもよりますが、一般的には慣らし運転は1,000km程度)
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ただ、たとえ1万km以下のバイクでも、メンテナンスを疎かにしていたバイクでは、状態の悪い個体も少なくありません。
しっかりと、オイル交換などの定期メンテナンスを実施している事が前提ですね。
そのため、距離が少ないバイクでも
は確認しておくと良いでしょう。
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バイクの走行距離はアテにならない
「走行距離はアテにならない。」
そんな事を言われたら、元も子もないですよね。
ただ、一部のバイクにおいては紛れもない事実と言えるので、知っておいた方が良いと思います。
まず前提として、走行距離については全く信用できないという事ではありません。
バイクの状態や、エンジンがどのくらい使用されたのかという判断材料としては「年式」と共に、とても重要な要素である事は間違いありません。
ただ、少し想像してみてください。
このようなバイクは「走行距離が少ない=程度の良いバイク」という事ができるでしょうか?
また、一方でこのようなケースはいかがでしょうか?
このようなバイクは「走行距離が多い=程度の悪いバイク」という事ができるでしょうか?
バイクにおいては、車よりもエンジンが露出しており整備性も高いため、このようなケースは少なくありません。
特に、メーター交換などは一般のユーザーでも簡単にできてしまいます。
また、ショップのメカニックの方に話を聞くと、「走行距離よりもきちんとメンテナンスされてきたかの方がよっぽど重要」という人の方が圧倒的に多いです。
つまり、走行距離の数字だけを信用してしまうとリスクがあると言うわけです。
バイクの状態は、素行距離だけでなく総合的に判断する方が良いという事ですね。
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走行距離の改ざん(メーター巻き戻し)とは
走行距離を故意的に変更するのが、いわゆる「メーター改ざん」です。
そもそも、走行距離を偽ってバイクを販売することは違法行為です。
また、走行距離を偽ってインターネットや雑誌に広告を出すことも、景品表示法に触れますので違法です。
しかしながら、昔は本当にたくさんありましたし、残念ながら今でも完全になくなってはいないのが実情です。
では、実際に改ざんにはどのようなものがあるのでしょうか?
まずは「メーターの巻き戻し」です。
例えば、50,000㎞まで進んだメーターを10,000㎞まで巻き戻してしまえば、販売しやすいと言う訳ですね。
これはアナログメーターだけでなく、デジタルのメーターでもできてしまいます。
実は、メーターの距離を再設定・書き換えをビジネスにする会社も普通に存在しています。
彼らはあくまでも「故障や災害などにともなう走行距離の現状修復、修理」を仕事にしており、「法律に触れる改ざんや故意・販売目的での設定変更や巻き戻しは禁止」しています。
ただ、このような会社も存在するという事は、メーターの巻き戻しが可能という事の証明になります。
悪意をもってこのような会社を利用する人も存在する可能性は充分あるでしょう。
それから、「メーターの交換」。
カスタムとして個人でメーター交換をする人もいますよね。
なので、メーターを交換すること自体は容易である事は言わずもがなです。
カスタムメーターであれば、交換されていることもわかるかも知れませんが、純正品に変わると気付かない人もいるかも知れません。
今までのメーターを交換することで、今までの走行距離をリセットしてしまうのです。
もちろん、本当にカスタム目的で交換するケースや、単純に故障して修理・交換したという場合もあるでしょう。
しかしながら、故意に走行距離を少なく見せて「販売を目的」に行う事は違法な改ざん行為です。
改ざんを無くす取組みも進んでいる
中古バイクの流通の中心になっているのが、業者オークションです。
中古バイク販売店も、この業者オークションでバイクを購入したり、また店頭では販売しないバイクを出品したりしています。
現在は業者オークションに出品されたバイクは、車体番号と過去の出品履歴をもとに、走行距離が改ざんされてないかを全台チェックされています。
そのため、過去の出品時よりも走行距離が不自然に減少していたらすぐわかる仕組みになっています。
また、自動車公正取引協議会や、業者オークション、また中古バイクの広告媒体などが連携して改ざんの撲滅に向けて取り組んでいます。
そのため、昔に比べると、メーターの改ざん車両は大幅に減ったと言われています。
しかしながら、
は、過去の履歴がないために、改ざんの有無が判別できないケースもあります。
このようなバイクが、万が一改ざん車だとして、バイクショップの店頭に並んだ時には、残念ながらショップ自体も気づいていないケースもあるのが実情です。
今後も各関係者には、取り組みを強化していただき完全撲滅を期待したいところですね 。
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中古バイクの4つの走行距離表示
中古バイクの走行距離表示については、自動車公正取引協議会が平成28年10月より、規約改正をしています。
これは、業者オークションや中古バイク広告の走行距離ルールを変更したものです。
一般の方は、業者オークションとの接点はなくても、中古バイクの広告(情報誌やWeb)については参考にしている人も多いのではないでしょうか。
では、何が変わったかのかと言うと・・・この規約改正に伴い、
の走行距離の表記区分が4つに分かれています。
それぞれ詳しく解説していきましょう。
※詳しくは公正取引協議会のホームページにも詳細が記載されています。
①実走行車
「走行距離表示=実際の走行距離数」と思われるバイクで、以下の2点をクリアしている事が条件。
後者はバイクショップやオークションの査定員の判断による部分はありますが、「記録」と「プロの目」の双方からで判断しています。
②走行メーター交換歴車
これは、メーター交換がされていても、実際の走行距離が明確なバイクですね。
「交換歴車」と記載され、メーター交換前の走行距離と交換後の走行距離の両方の表示が必要。
また、「公取協作成」の交換記録シールが車体に貼ってあることが条件になっています。
繰り返しになりますが、
です。
これに該当しないメーター交換車は、次の「減算歴車」の扱いになります。
③走行距離減算歴車
次のいずれかに該当するバイクは「減算歴車」になります。
意外と多いのが、この減算車です。
例えば、ストリート系のカスタム車などをメインで扱っているショップ。
このようなバイクショップでは、 敢えて小振りなカスタムメーターに交換していたりするため、店頭在庫のほとんどが「減算歴車」というケースもあります。
④走行距離疑義車
疑義とは疑いがあるという事ですね。
「メーター交換歴や減算歴はないが、車両状態から走行距離が正しいとは言い切れない」場合に走行距離疑義車と表示します。
例えば、昔の原付スクーターなどは、メーターが4桁しかありません(※9999㎞まで)。
走行を重ねて、9999㎞を超えると、1回転して0㎞に戻ってしまうのです。
車両の発売年や状態を鑑みると1回転どころか2回転していてもおかしくないバイクもあるでしょう。
そのような場合はショップの方で疑義車としている時もあります。
また、走行距離は少なく、減算や交換の履歴は無くても、ブレーキローターやステップのゴムの減り方が不自然であったり、プロの目からみて明らかに怪しい場合も疑義車になります。
※減算歴車と走行距離疑義車については以下の記事にて詳しくまとめていますので、参考にしてみてください。
走行距離とあわせてチェックするポイント
実際にバイクを購入する時には、もちろん走行距離をチェックする事はおすすめします。
ただ、走行距離をチェックする場合に、あわせてチェックした方が良いポイントを紹介します
①車検証や点検記録簿、メンテナンスノートなど
定期的に整備や点検、オイル交換の履歴があれば、その都度、日付や走行距離なども記載があります。
きちんとメンテナンスされていたバイクなら、多少距離が多くても調子よく乗られていた可能性も高いです。
また、記録が残っていれば、改ざんされた可能性もかなり少なくなるでしょう。
それから、車検証の場合は「車検時の走行距離が過去2回分記載」されます。
という具合です。
通常は走行距離が増えていきますが、メーター交換をすると、今回の走行距離が前回よりも少ないというケースが発生します。
例えばですが、
という具合です。
走行距離が少なくなっているのは不自然なので、メーターの交換などがあったことに気が付きます。
しかしながら、車検証への記載は過去2回分までです。
つまり、更に車検を通すと車検証上ではわからなくなってしまいますので注意が必要です。
そのため、車検証よりは点検記録やメンテナンスノートの整備履歴の方が参考になるでしょう。
②信用できるショップかどうか
ショップに並んでいるバイクは、そのショップが販売しても大丈夫だと判断したバイクになります。
そのため、バイクを購入するにあたって信用できるショップかどうかのチェックも必要です。
等をチェックしてみると良いでしょう。
まとめ:走行距離の数字だけを鵜呑みにしてはダメ!
バイクを購入する時の「走行距離」はとても重要な判断材料です。
しかしながら、重要な要素だからこそ、その数字だけを見るのではなく、数字の真偽やその背景感も併せて見る必要があります。
以前、とあるバイクショップのスタッフさんが仰っていたことがあります。
「たしかに走行距離は大事だけど、たとえ距離が多くてもちゃんとメンテナンスして大事にされていたバイクの方が自信もって売れるよ」
非常に印象に残る言葉ですね。
是非、バイク購入の参考にしてみてください。
また、中古のバイクを買う時にチェックすべきポイントについてもまとめていますので、是非参考にしてみてください
※2020年5月に更新しました。